交通事故による神経、精神障害「脊髄障害」
2015.06.23更新
脳の神経細胞と直接繋がる脊髄は、脳から送られた指令を身体の各部位へ伝える連絡路としての役割を担っています。交通事故により脊髄を保護する脊椎や脊柱管が強い衝撃を受けると、その影響が脊髄にまで及び様々な症状が表れます。
一度損傷を受けた脊髄を再生させることは困難であり、重度の運動・感覚麻痺、循環機能障害や呼吸機能障害などの全身症状を残した場合は、日常生活に多くの介護を要する状態に陥る恐れがあります。
脊髄損傷による症状・機能障害について
脊髄損傷では、損傷した部位以下の神経が麻痺します。この場合の麻痺とは、筋肉の弛緩または痙縮(意思に反して出現する異常筋緊張)、または感覚喪失を指します。麻痺が生じた部位によって四肢麻痺・対麻痺(両下肢のみ麻痺)・単麻痺(一肢のみ麻痺)の3つに分類されます。
麻痺は、運動及び感覚機能が完全に失われる「完全麻痺」と、一部の機能を残す「不完全麻痺」に分けられます。完全麻痺では、針を刺しても痛みを感じることができず、自らの意思で四肢や体幹を動かしたり、コントロールしたりすることが困難になります。一方、不完全麻痺ではある程度筋力やと感覚機能が保たれているものや、意図した方向に手足を動かすことはできても感覚は完全に失われている等、症状に個人差があります。
運動や感覚麻痺のほかにも、心筋収縮力低下をはじめとする循環障害、呼吸障害、排尿便のコントロールが不能となる膀胱直腸障害など生命維持に関わる全身症状を呈すことがあります。また、損傷された脊髄の局所症状として、疼痛や腫脹、変形、重度の関節可動域制限を伴う場合は、心身に更なる苦痛や制限を与え日常生活に大きな影響を及ぼします。
脊髄損傷による後遺障害等級認定
脊髄損傷では、CTやMRIの画像診断により損傷部位が確認されていることに加え、感覚検査や脊髄反射検査などの神経学的検査によってその損傷が裏付けられる場合に、その程度や内容に応じた後遺障害等級が与えられます。
脊髄損傷による後遺障害等級は、神経麻痺の部位と日常生活における介護の必要度を基準に1級から12級の等級が定められています。最も上位の1級1号には、「高度な四肢麻痺または対麻痺、中等度の四肢麻痺により常時介護を要するもの」が該当し、同等の障害でありながらも「随時介護を要する」ものに対しては2級1号が与えられます。
軽度の四肢麻痺や中等度の対麻痺ないしは軽度の対麻痺、下肢の高度な単麻痺については、就労可能な状態かどうかが問題になり、「(終身)就労ができない」状態のものには3級3号、「極めて軽易な就労以外はできない状態」には5級2号が与えられます。
以下、軽度な麻痺を残している状態で「就労可能な職種の範囲が制限される」場合は7級4号、運動麻痺がなく通常の労務は可能なものの、広範囲に渡って感覚障害が残る場合などには12級13号が与えられます。
運動や感覚麻痺の程度が軽ければ軽いほど、脊髄損傷の存在が見逃されてしまうことも少なくありません。また、重症の場合は規定の等級認定基準だけではなく、日常的な介護の様子も判定の基準として加えられる場合もあります。交通事故後の症状や等級認定について不安があるときは、専門の法律家に相談するようにしましょう。