交通事故による神経、精神障害「てんかん」
2015.06.23更新
交通事故の衝撃による脳挫傷または頭蓋骨陥没骨折が原因で、脳実質部の損傷が起こり「てんかん発作」を引き起こすことがあります。このような外傷を原因としたてんかんでは、損傷(瘢痕)部から発せられる異常な電気信号により突然手足が突っ張ったり、痙攣を起こしたりします。長期間に渡って発作が繰り返されると正常な脳細胞を傷つけたり、精神障害や人格変化、知能低下などが表れたり社会生活にまで影響を及ぼす恐れがあります。
てんかんの症状による分類
てんかん発作は、意識障害を伴い、発作のはじめから全身に大きな痙攣や全身硬直が起こる「全般発作」と、身体の一部分から徐々に発作が現れ、全身に広がる「部分発作」の二つに大別されます。このうち、全般発作は、発作の特徴や持続時間によりさらに分類されています。
代表的なものには、意識喪失と全身硬直を特徴とした「強直間代発作」、数秒のうちに意識が回復する「単純欠神発作」、全身の筋緊張が高まり両手を振り上げたり、両足を曲げ伸ばしたりさせる「点頭発作」などが挙げられます。
一方、部分発作には発作中の意識が保たれる「単純部分発作」と、意識が消失する「複雑部分発作」などがあります。いずれにせよ、発作が起きている間は、自分自身で発作の状態を伝えることが難しいため、周囲に居る人が適切に対処し二次的な事故やケガを防ぐことが大切です。
てんかん診断について
てんかんの診断では「脳波検査」が最も重要な検査として位置づけられています。脳波検査では、てんかん発作の有無だけではなく、発作の強さや持続時間などをより詳しく知ることができます。
自賠責法による後遺障害等級認定を受けるには、脳波検査の他にも、CTやMRIなどの画像診断により原因部位の特定が重要となります。画像診断で原因部位を特定できなかった場合は、血液・尿検査が有効です。これにより、腎障害による低カリウム血症など脳実質の損傷以外に原因が存在するかどうか確認することができます。また、遺伝や生まれつきの異常(奇形)が影響している場合があるため、病歴や家族歴の詳しい聴取も行われます。
てんかんによる後遺障害等級認定について
交通事故による脳実質の損傷を原因としたてんかんに対して、後遺障害等級が与えられます。てんかんによる後遺障害等級は、発作の頻度と程度により4段階に格付けされています。「1カ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が『意識障害の有無を問わずに転倒する発作』又は『意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作』」に対しては、最も上位となる5級2号が与えられます。転倒する発作が数カ月に1回あり、それ以外の発作が1カ月に1回以上あるものに対しては、7級4号が該当します。
てんかん発作には、服薬治療によりある程度コントロールが可能となるものがあります。服薬治療を継続することにより、発作がほぼ完全に抑制されているものに対しては9級10号、発作が表れなくなっても、脳波検査で特徴的な波形が見られる場合には12級13号が与えられます。
てんかんは長期の薬物治療が必要になる上、いつ発作が起こるか分からないという不安から、就労をはじめとした社会的生活に様々な制限を来すことになります。後遺障害等級は、後々の損害賠償請求にも関わる重要な指針になりますので、認定申請手続きや該当等級に不安がある場合は、専門の法律家に相談することをおすすめします。