後遺障害等級~14級と12級はこんなに違う
2014.11.04更新
交通事故による後遺障害は程度と部位によって1級~14級までの等級が設けられています。このうち、最も認定されるケースが多いのが神経症状による12級と14級と言われています。 しかし12級と認定されるか、14級と認定されるかでは、支払われる損害賠償金額(保険金額)にかなり大きな差が生じます。 そこで今回は、後遺障害等級の12級と14級の違いや、等級を上げるためのポイントについて解説します。
交通事故の典型的な後遺症は「むちうち症」
交通事故を原因とする後遺症で最も典型的なのは「むちうち症」をはじめとする神経症状です。腰もあわせて傷めることが多いのですが、首の場合は「頸椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」といった診断名が付けられます。
ところが、同じ「頸椎捻挫」という診断名であっても、後遺障害等級では「12級13号」と認定されることもあれば「14級9号」と認定されることもあります(14級のほうが損害賠償金額が低い)。それどころか、場合によっては「14級9号」すら認められず、「非該当」とされてしまうことさえありえます。 この「12級13号」と「14級9号」とは一体何が違うのでしょうか? 「自動車損害賠償保障法施行令」の「別表二」にはこう書いてあります。
- ・12級13号
- 認定基準:局部に頑固な神経症状を残すもの
- ・14級9号
- 認定基準:局部に神経症状を残すもの
実は文章としては「頑固な」があるかないかの違いでしかありません。 ところが、このどちらに認定されるかによって支払われる賠償金額には大きな差が生じます。
12級と14級での賠償金の違い
12級と14級での賠償金の違いがどれくらいあるのか、あくまで原則的な事例を挙げて見てみます。
- ・12級13号
- 自賠責保険の後遺障害に関する賠償金額:224万円 裁判所基準の後遺障害慰謝料額:290万円
- ・14級9号
- 自賠責保険の後遺障害に関する賠償金額:75万円 裁判所基準の後遺障害慰謝料額:110万円
上記の自賠責保険の賠償金額とは自賠責保険が独自に定めている基準による金額です。裁判所基準(弁護士会基準とも)の後遺障害慰謝料額とは判例の蓄積をもとに定められた、裁判で認められる可能性の高い金額だと思ってください。 しかもこれは後遺症慰謝料のみなので、逸失利益という仕事で得る収入が減ってしまうことを考慮した賠償金(年齢などによって異なる)を足すと、14級で総額200万円以上、12級で800万円以上になる可能性があります。
これだけの違いがあると、14級ではなく12級に認定されることが、被害者にとっていかに大きな問題かということが分かります。
等級を上げる方法はある?
では、14級ではなく、12級に認定されるためのポイントとは何なのでしょうか? ここで再び問題になるのが14級と12級の違いです。実は先述した両者の違いの説明とは別に、自賠責実務と裁判実務の世界ではもう少し別の基準があります。それは次のようなものです。
- ・12級13号
- 「障害の存在が医学的に証明できるもの」
- ・14級9号
- 「障害の存在が医学的に説明可能なもの」あるいは「医学的には証明できなくとも自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの」
これでもよく分からないと言えばそうなのですが、意味するところはこういうことです。 「医学的に証明できる」とは「他覚的所見が存在する」ことを意味します。「他覚的所見」とはレントゲンやMRIなどの「画像所見」によって病変が捉えられていること、あるいは関節の可動域を調べるテストなどの「神経学的検査結果」が障害を裏付けていることなどを意味します。 以上のことから、
- 1.画像上、病変が明確に捉えられていること
- 2.他覚的所見が複数存在し、それらが相互に一致すること
- 3.病変が加齢などによるものではなく交通事故が直接の原因になっていること
といった条件を満たすことができれば、12級を獲得できる可能性が高くなるのです。14級と認定されたものを12級に引き上げることも、できないわけではありません。 そのためにも、事故後はなるべく早くレントゲンやMRI撮影を行い、また充分な神経学的検査を受けることが重要になります。