交通事故でもっとも多い「むち打ち症」の病状について
2015.06.23更新
むちうち症は、自動車事故による後遺障害の中でも特に等級認定が難しいと言われています。受傷者によって症状の表れ方に個人差が大きく、ときには加齢による症状と混同されがちです。さらに、その症状を裏付ける医学的所見を得ることが難しいため、等級非該当になってしまうケースが多いのです。一方、医学的所見に乏しい場合でも治療経過や症状の推移から判断し「将来的に回復が難しい」と判断されれば、12級13号ないしは14級9号の等級が認められる可能性があります。
「むちうち症とは?」
むちうち症は、自動車走行時に受けた強い衝撃が頸椎や腰椎に伝わることによって生じる様々な症状を指します。椎体に過剰な負荷がかかり、変形や捻転、屈曲が生じると付近を走行する神経を圧迫し、その神経が支配する領域に痺れや痛み、感覚異常が現れます。
症状は手足に現れるのが一般的ですが、自律神経に障害が及ぶと、めまいや動悸、耳鳴り、発汗異常などを呈する場合もあります。一見、どこにも外傷を受けていませんので、どんなに症状が重くても周囲からの理解を得ることが難しく、精神的なストレスを抱えてしまうことも少なくありません。
「むちうち症の後遺障害とは」
むちうち症の後遺障害診断では、手足の痺れや感覚異常などの神経症状が、脳神経系の機能障害によるものかどうかで判断を行っていきます。例えば、自覚症状として「手の外側に痛みを伴う痺れ」を訴えている場合は、その領域の感覚を支配する頸椎4~5番から走行する神経に何らかの機能障害が起きていると推測されます。
神経の機能障害が存在していることを裏付けるために、MRIなどの画像診断のほかいくつかの神経学的診察を行います。画像診断では、自覚症状から推測される部位に神経を圧迫するような椎体変成がないかどうか確認します。神経学的診察は、画像所見をさらに裏付ける補助診断の役割を担います。反射検査や神経根誘発検査、感覚検査などいくつかの検査を組み合わせ、障害部位を特定していきます。
このように他覚的な検査によって明らかな神経の機能障害が証明されれば、むちうち症の後遺障害として12級13号の等級認定を受けることができます。また、画像所見が得られていなくても、そのほかの神経学的診察から客観的な説明がつく場合には14級9号に認定されます。
「むちうち症の後遺障害等級認定を得るには」
むちうち症の後遺障害は、受傷者が訴える自覚症状を他覚的に証明することができれば等級の認定を受けることができます。しかしながら、実際には神経の機能障害を医学的に説明できるケースは、非常に希です。ただし、受傷時の状況や通院を余儀なくされている期間が、等級認定に反映する場合もあります。事故発生状況を記録した実況見分調書、治療の記録や継続的な通院の必要性を記した診断書を等級認定申立書に添付し、等級認定に相当する症状であることを具体的に訴えていきましょう。
むちうち症の後遺障害等級認定を受けるには、むちうち症に詳しい医師のもと正確な診断を受ける必要があります。また、既に「非該当」の結果が出ている場合にも、異議申し立てにより再申請することも可能です。損害賠償請求や等級認定について分からないことがあったら、専門の法律家に相談してみてはいかがでしょうか。