交通事故による「脊柱(背中、腰)」の後遺症について
2015.06.23更新
頭蓋骨の後側から背中の正中線上を縦に走る部分を、脊柱と呼びます。脊柱は、32~34個の椎骨(頸椎・胸椎・腰椎・仙椎・尾骨)とそれを囲む筋肉、腱、軟部組織により構成され、姿勢保持や重心移動、体幹と四肢に柔軟な可動性を与えるなど日常生活動作の要として重要な機能を備えています。椎骨は、その内側を走る脊髄神経を保護する役割も担っており、交通事故などにより強い衝撃が加わると運動麻痺や末梢神経症状などの後遺障害を残す恐れがあります。
「脊柱の後遺障害等級認定について」
脊柱の後遺障害は脊柱の変形障害、運動障害、荷重機能障害に3つに分類されています。原則として、レントゲン写真やCT・MRI画像診断によって椎骨骨折や軟部組織損傷などの器質的変化が認められたものに対して等級が与えられます。
脊柱の変形障害は、損傷により椎体の変形(高さと傾斜角度変化)がどの程度、何カ所に生じたかによって評価されます。2カ所以上で椎体個分の高さ変化および椎体配列の乱れにより50度以上の側彎が見られるものは「脊柱に著しい変形を残すもの」として6級相当の等級が認められます。以下、椎体2分の1個分の高さ変化が見られ、頸椎(第一頸椎)と軸椎(第二頸椎)の位置関係が乱れたものを「脊柱に中等度の変形を残すもの」とし8級相当、脊柱固定術が行われたもの、3個以上の脊椎について椎弓形成術を受けたものについては11級相当の等級が認められます。
脊柱の運動障害では、頸椎および胸腰椎の両方が骨折または軟部組織の変化、脊椎固定術の影響により可動性が完全に失われたもの(強直)を「脊柱に著しい運動障害を残すもの」として6級相当の等級が認められます。著しい運動障害には至らないものの、頸椎または胸腰椎のいずれかに通常の2分の1以上可動性を失った部位が認められるものが、「脊柱に運動障害を残すもの」として8級相当の等級が認められます。
荷重機能障害とは、コルセット(硬性装具)装着なしには姿勢保持が困難な状態を指します。このうち頸部及び腰部の両方について、脊柱を支える筋肉(脊柱起立筋など)が麻痺しているもの、または軟部組織に明らかな気質的変化を認めるものを「脊柱に著しい荷重障害を残すもの」とし、6級相当の等級が認められます。同様の障害が頸部、腰部のいずれかに生じている場合は「脊柱に荷重障害を残すもの」として8級相当の等級が認められます。
「体幹骨の後遺障害等級認定について」
交通事故の衝撃により、体幹骨(鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤)に著しい変形を残した場合、12級5号の後遺障害等級が認められます。体幹骨の著しい変形とは、裸になったときに変形が明らかにわかる程度のものを指します。レントゲン写真やCT・MRI画像診断によって、はじめて発見されるような軽微な変形は非該当になります。体幹骨の変形は、呼吸(胸郭)運動や四肢の可動性低下や関節疼痛を引き起こす恐れがあるため、後遺障害の等級認定以上に、労働能力損失率やその期間について問題になることが多いようです。
交通事故による後遺障害の等級認定基準は、医学の進歩に応じて数年置きに改訂が行われています。これまで後遺障害として認められていなかったものも、医学的な裏付けとともに等級認定対象となる事例が増えています。最新の基準については、専門の法律家にお問い合わせください。