後遺障害に関わる賠償金「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」
2014.11.04更新
後遺障害認定を受けると、自賠責保険における後遺障害慰謝料と逸失利益が決まります。自賠責保険によって支払われる後遺障害に関係した損害賠償金(保険金)は、この両者の合計となります。 そこで今回は、それぞれ具体的にどのような基準によっていくら賠償金が支払われるのかをご紹介します。
後遺障害慰謝料とは?
後遺障害慰謝料とは、後遺障害等級認定がなされた時点で、後遺障害(と認められた後遺症)によってもたらされる精神的苦痛を賠償するものとして支払われる保険金のことです。
これは通常の入通院慰謝料とは別途に支払われます。後遺症慰謝料とも呼ばれます。 後遺障害慰謝料の額を決める基準には「自賠責基準」、「任意保険会社基準」、「裁判所基準」があり、前2つはそれぞれ保険会社が独自に決めた基準による額、裁判所基準は過去の判例の蓄積をもとに算出された基準による額のことを言います。このうち裁判所基準が最も高い額となります。
裁判所基準の後遺障害慰謝料の額は障害等級によって次のようになっています(あくまで目安であり、実際には事案ごとに慰謝料額の調整がなされます)。
1級 | 2,800万円 | 8級 | 830万円 |
---|---|---|---|
2級 | 2,370万円 | 9級 | 690万円 |
3級 | 1,990万円 | 10級 | 550万円 |
4級 | 1,670万円 | 11級 | 420万円 |
5級 | 1,400万円 | 12級 | 290万円 |
6級 | 1,180万円 | 13級 | 180万円 |
7級 | 1,000万円 | 14級 | 110万円 |
逸失利益とは?
一方の後遺障害における逸失利益とは、交通事故を原因として後遺障害が残ってしまったときに、本来は被害者本人が得られるはずだった利益、つまり事故に遭ったことで得られなくなってしまった利益を賠償するものです。 それまで就いていた仕事内容および後遺障害の状態にもよりますが、たとえば後遺障害により仕事が今までどおりにはできなくなってしまった、あるいは重度後遺障害で仕事自体ができなくなってしまった場合、後遺障害がなければ得られていたであろう収入などの利益を指すことが一般的です。
逸失利益を算定するための計算式
逸失利益の算定は、労働力低下の程度、収入変化、将来にわたる昇進、転職、失業不利益の可能性など、あらゆる側面を考慮されているのが特徴です。その額は下記の計算式によって求められます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失年数(ライプニッツ係数をかけたもの)
(例)30歳、年収430万円、後遺障害認定等級第9級の場合 4300000×(35/100)×16.711= 25,150,055円
「基礎収入」は交通事故に遭う前の年収を基礎収入とするのが原則です。ただし、若年者あるいは失業者など、現時点での収入より将来にわたって収入増加が見込める場合、平均賃金を基礎収入として考慮するケースもあります。加えて、専業主婦など実際には賃金収入を得ていなくても、同一価値として考慮し、賃金労働しているものとみなして計算することも多くなります。
「労働能力喪失率」は事故を原因とする後遺障害によって働けなくなってしまった割合を示す率です。 後遺障害を負ったことにより労働ができなくなってしまい、収入が減少するものとみなされることから設定されています。 等級ごとの労働能力喪失率は以下の「労働能力喪失率表」によって決まっています(ただし、裁判の結果によって喪失率が変更される可能性もあります)。
1級 | 100% | 8級 | 45% |
---|---|---|---|
2級 | 100% | 9級 | 35% |
3級 | 100% | 10級 | 27% |
4級 | 92% | 11級 | 20% |
5級 | 79% | 12級 | 14% |
6級 | 67% | 13級 | 9% |
7級 | 56% | 14級 | 5% |
「労働能力喪失年数」は後遺障害を負ったことで労働能力を一部喪失したと判断される年数です。一般的には67歳まで、あるいは平均余命の半数、このふたつのどちらか長い年数分、労働能力を喪失してしまったと判断されると認められます。 喪失年数は下位等級の場合、制限されることがあるので注意が必要です。具体的な数値をあげると、一番下位等級(一番後遺障害が軽い等級)である14級で3~5年程度に制限される事例が多く報告されています。