交通事故による「耳」の後遺症について① 聴力、耳介
2015.06.23更新
耳の後遺障害は、聴力障害と耳介欠損の二つに分類されます。それぞれに障害等級表が定められており、障害の内容と程度によって4級ないし14級の等級が認められます。いずれも、医師による適切な検査・診断に基づく後遺障害診断書を作成する必要があります。
「聴力障害の検査方法」
聴力障害は、音を聞き取る力(純音聴力)と言葉を聞き分ける力(語音聴力)の2種類の検査によって評価されます。純音聴力の検査では、オージオメーターを使用し、ヘッドフォンから流れる「ピーピーピー」または「プープープー」などといった強さ(周波数)の異なる音を聞き取っていきます。純音聴力は、デシベル(dB)という単位で数値化されます。数値が高いほど聴力が障害されていると評価されます。例えば純音聴力が91dBの場合、耳のそばで大きな声で話しても理解し難いレベルまで聴力が失われている状態に相当します。
語音聴力の検査では、スピーチジオメーターを用い、大きさの異なる「あ」「き」「も」などの音を聞き分けていきます。語音検査では、その正答率から「明瞭度」を評価することができます。後遺障害診断書には、その最高得点を最高明瞭度として記載します。明瞭度は“どの位の大きさであれば音を正確に聞き取ることができるか”を表す指標となります。健聴者の明瞭度はほぼ100%であり、聴力を完全に失った状態は0%です。
これらの検査は、7日間以上の期間をおいて合計3回実施されます。それぞれの結果を比較検討し、評価が決まります。ただし、語音検査の場合は1回目の検査が正確であると判断されれば以降の検査は行われません。また、補助検査として聴性脳幹反応検査やあぶみ骨筋反射を行い、他覚的所見を追加することがあります。
「聴力障害の等級認定基準」
聴力障害の等級認定表は、両耳に障害がある場合と1耳のみの場合に分けられています。両耳の障害では純音聴力と最高明瞭度に応じて4級3号から11級5号の6段階、1耳の障害では9級9号から14級3号の4段階に等級が認められます。1耳ごとの評価を併合の方法を用いて、等級を定めることはありません。
「耳介欠損の等級認定基準」
事故の衝撃により、耳介(外耳道のうち外に露出している軟骨部分)の2分の1以上欠損している場合、12級4号の等級が認定されます。同様に両耳の欠損している場合は、併合の方法により11級と評価されます。
2分の1以上の欠損がなくても、醜状障害として7級12号または9級16号の等級が認められることもあります。その場合は、いずれか上位の等級が認定されることになります。
耳の障害は、内耳や耳介だけではなく聴神経などの脳神経系に問題がある場合にも生じます。そのため、聴力検査だけでは正しい診断ができない場合もありますので、神経内科や脳外科などでも診察を受ける必要があります。どの科を受診したらよいか迷ったときは、後遺障害の等級認定に詳しい弁護士等に相談すると良いでしょう。