交通事故の後遺障害の後に自殺した場合、一方の当事者に責任はあるのか?
2014.05.06更新
回答:一方の当事者に責任はある
自殺との相当因果関係の成否について判断した判例(最高裁平成5年9月9日判決)
◆ 事案
- 東雲 太郎(仮名)は乗用車を運転中、総合 一郎(仮名)運転の車両と衝突し、傷害を負った。東雲 太郎は、その後、後遺障害が残り、仕事に復職できなかったこと等によってうつ病になり交通事故から3年6カ月後に、自殺するに至った。
- 東雲 太郎の相続人である東雲 五郎(仮名)及び東雲 花子(仮名)が、東雲 太郎の自殺は本件交通事故に起因するものであるとして、総合 一郎に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
◆ 判旨
本件事故の態様が東雲 太郎に精神的衝撃を与え、その衝撃が長い年月にわたって、残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、災害神経症状態に陥り、更にその状態から抜け出せないままうつ病になり、改善をみないまま自殺に至った。
また、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病になりやすく、うつ病に罹患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いことなどを総合すると、本件事故と東雲 太郎の自殺との間に相当因果関係を認めた上、自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は正当として是認できる。