雇用者は従業員のマイカー通勤の事故について損害賠償する責任があるのか?
2014.05.06更新
回答:損害賠償する責任がある
マイカー通勤による事故に関する判例(最高裁平成元年6月6日)
◆ 事案
- 東雲 太郎(仮名)の従業員 総合 一郎(仮名)はマイカー通勤の途中で、前方不注意により、対向車と衝突し、対向車を運転していた法律 花子(仮名)を死亡させた。なお、東雲 太郎はマイカー通勤を禁止していたが、事実上黙認していた状況であった。
- 法律 花子の相続人と総合 一郎との間では示談が成立し、損害の一部が補填された。
- 法律 花子と保険契約を締結していた日本橋 次郎(仮名)が、法律 花子の相続人に対して2.で賄われない残額について支払をした。
- 日本橋 次郎が東雲 太郎に対して求償に及んだ。
◆ 判旨
自賠法三条の運行供用者とは、自動車の運行によって利益を得ている者であって、かつ、自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にある者をいうが、右支配、管理の態様は、個々の車両の運行を実際に逐一、かつ、具体的に支配、命令し指揮するまでの必要はなく、直接または間接にそのような指揮、監督をなしうる地位にあることをもつて足りると解すべきである。
東雲 太郎は、本件事故の際を含めて、ときに、法律 花子によって本件加害車が寮から作業現場への通勤手段として利用されていたことを黙認し、これにより事実上利益を得ており、かつ、東雲 太郎は、総合 一郎の雇用者として同人を会社の寮に住まわせ、会社の社屋に隣接する駐車場も使用させていたのであるから、本件加害車の運行につき直接または間接に指揮監督をなしうる地位にあり、社会通念上もその運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあつた者ということができる。
東雲 太郎は本件加害車の運行供用者として、同法三条本文に基づき、本件事故によって、損害を賠償すべき責任がある。