自賠責保険と任意保険の補償内容の違いと手続きの方法とは
2014.07.30更新
自動車保険には自賠責保険と任意保険があります。自賠責保険と任意保険は2階建て構造になっており、強制加入の自賠責保険(1階部分)でカバーできない部分を任意保険(2階部分)がカバーします。自賠責保険の補償内容は法律で決まっていますが、任意保険では補償内容を加入者が自由に選ぶことができます。
自賠責は強制加入の保険
自賠責保険は、正式名称を自動車損害賠償責任保険と言い、自動車事故による人身事故の被害者を救済するため、全ての自動車に加入が義務付けられています。
自賠責保険に加入せずに自動車を運転した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられるほか、交通違反減点6点となり即時に免許停止の処分を受けることになります。
自賠責保険の保険金は、自動車の運行によって他人にケガをさせたり、死亡させた場合に支払われますが、物損事故については支払われません。
また、自賠責保険で支払われる保険金は法律で上限が定められています。上限額は死亡による損害は3,000万円、傷害による損害は120万円、後遺障害による損害は障害の程度に応じて75万円~4,000万円となっています。なお、後遺障害の上限が死亡事故の上限よりも高いのは、介護費用相当分が考慮されているからです。
自賠責の補償に上乗せする任意保険
任意保険は、自賠責保険でカバーされない損害を補償するための保険です。任意保険は加入が義務づけられているものではなく、加入するかどうかは個人の自由です。 しかし、交通事故では被害者に多額の損害を与えてしまうこともあり、そうなれば自賠責保険だけでは到底補いきれませんので、任意保険に加入することが常識となっています。実際に、任意保険に加入している人は約70%程度と言われています。
任意保険では補償内容を選べる
自賠責保険と任意保険の補償の大きな違いは、自賠責保険では補償内容が選べないことに対し、任意保険では補償内容を加入者自身が自由に選べるという点です。
自賠責保険は対人賠償のみになりますが、任意保険は対人賠償、対物賠償どちらもカバーできるほか、自損事故をカバーすることもできます。
自賠責保険は補償額の上限額が決まっていますが、任意保険は加入者が補償額の上限を決めることができ、対人賠償、対物賠償とも金額無制限の補償をつけることも可能です。
なお、任意保険では被害者側との示談を代行するサービスがありますが、自賠責保険にはこのようなサービスはありません。
また、自賠責保険は補償内容が法律で定められていますので、どこの保険会社に加入しても保険料は一律です。一方、任意保険の保険料は保険会社や補償内容によってまちまちです。
自賠責と任意保険の請求方法の違い
自賠責保険による保険金の支払方法には、加害者が被害者に損害賠償金を支払った後で保険会社に保険金の請求をする「加害者請求」と、被害者が加害者の加入している保険会社に直接保険金の請求をする「被害者請求」の2つの方法があります。また、加害者側から損害賠償金の支払いを受けておらず、治療費等の当座の費用が必要な場合には、仮渡金請求もできます。
一方、任意保険には被害者請求や仮渡金請求の制度はありません。任意保険では、被害者は保険会社の担当者と示談を行い、損害賠償額を決めることになります。
なお、加害者が任意保険に加入している場合には、被害者は任意保険の会社を窓口として自賠責保険の保険金も合わせて受け取ることができます。これは任意一括払い制度と呼ばれており、任意保険の会社は自賠責保険の保険金を立て替え、立替分を後で自賠責保険の会社に請求する形になります。
任意一括払い制度を利用すれば、被害者は自賠責保険と任意保険の両方に請求する手間が省けます。しかし、任意保険の会社では自社の支払いをなるべく抑えようとし、自賠責保険の範囲内の損害賠償金額に収めようとすることがあります。
補償をしっかり確保するためには、自賠責保険に被害者請求をした後で、別途任意保険を請求した方がよい場合があります。